太陽風のCT解析
シンチレーション観測の視線積分効果
太陽風シンチレーションを利用して測定される速度は、電波源と地球を結ぶ視線上を横切る全ての太陽風の動きを反映した値です。したがって、どの辺りにどのような速度で太陽風が吹いているのかを正確に求めることができません。この問題を解決する方法として、人体の断層写真を撮るCT(計算機トモグラフィー)法 を応用することで、正確な太陽風速度を求めることに成功しました。
矢印に沿った足し算の結果(緑)から、足された数字(黒)を推測するのがCTの原理です。
CT検査
CTの原理
太陽の自転を利用することで、太陽風を様々な角度から観測した情報を得ることができます。これを利用したのが、太陽風のCT解析です。
上は、観測データにCTを使わずに求めた速度分布。下は、CT法を利用して求めたもの。中緯度以上に高速太陽風が見事に再現されています。また、低緯度では、高速風と低速風がくっきりと分離されています。
太陽風のCT解析とコロナ磁場の解析は、コンパクトな低速風(赤色領域)が、小さなコロナホールから流れ出している様子を見事に解明しました。
宇宙探査機と比肩できる観測精度
宇宙探査機ユリシーズの観測値とCTから求めた速度を比較した図。 CT解析から得られた速度の正しさと、
その観測領域の広さがわかります。
CTの威力
太陽風のCT観測
コンパクトな低速風領域を再現するCT
CT検査では、様々な角度からX線を当てることで得られた情報を、計算機で解析して断層図を求めます。